先日、東京大学駒場リサーチキャンパス(先端科学技術研究センター)で開催中の山中俊治研究室の最終展示「未来の原画」展を見てきました。
山中俊俊治研究室は、山中俊治さんは、先端技術エンジニアリングとデザインとの関わりをテーマに、「美しい義足」などデザイン性に優れたプロダクトを世に出してきました。
数十年前まで、エンジニアリング(工業的な機構)やデジタルは、『美しいデザイン』というものに、つながっていく思想が希薄でした。
それを、この15年間で、新しいプロダクトを生み出し、デザイン性のエンジニア、あるいはエンジニアリングやデジタルの知識豊富なデザイナー、またはアーティストを育ててきました。
山中俊治さんのプロダクトの基礎は、構想段階で描かれるこの原画。
精密で、そこにアイデアが確立し、つまっている。
工業製品なのに、とても美しいと、思ってしまうのです。
そして、構想段階できちんと練られたアイデアは、CAD(立体造形ソフト)に落としてもきちんと製図できる。
私たちが、日頃、デザインを考えてCADにデータを落としていくときの思考プロセスは、いったいどうだろうか。
原案構想段階で、ここまで立体を捉えられているだろうか?と言えば、なかなか難しい。
エンジニアリングという、まさに機械の機構を考えつくすことで、そこに美しさが生まれるのは、とても興味深いことです。
MENTOSENのテーマ
『デザインとものづくり-人とデジタルの関係を考える』
の一つの解決策は、『機構』をデザインの要素に加え、それが人間的な温かみをつくりだしていくことなのかもしれませんね。
どんなにテクノロジーを駆使しても、最終的にはそこに人の幸福感が生まれないモノはあまり意味がないでしょう。
あらためて、テクノロジーとデザインのいい距離感を感じました。
山中研究室のウェブサイト
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バウハウスは、1919年にドイツ、ヴァイマールにできた、革新的な美術学校で、ヒトラー政権下に閉校に追い込まれるまで、わずか14年の歴史しかありません。けれど、その14年の中に、現在のモダニズムの源流をつくりました。
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中野区鷺宮(さぎのみや)にある「三岸好太郎、節子」のアトリエに行ってきました。
このアトリエが文化財として指定されているのは、この二人の画家のアトリエという以上に、バウハウスで学んだ数少ない日本人、山脇巌の設計によるものだからです。1936年に建ったという。
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感性を表現するために、私たちはテクノロジーを使う。
テクノロジーは、私たちに新しい表現の自由を与えました。
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Maho Takada function stainless-sope Silver925 リング photo @satomiki
10月14~23まで、シンコーストゥディオのお店で開催された、「高田麻帆作品展」が無事終了しました。
期間中は、たくさんの方々に来ていただき、心から感謝いたします。
街のお店で、コンテンポラリージュエリーという、アートとしてのジュエリーを紹介できること、
そして、ギャラリーではなく、路面に接した街のお店だからこそ、普通の方々がふらっと立ち寄りやすかったのかもしれません。
コンテンポラリージュエリーは、1960年代にヨーロッパで誕生したアプライドアートの一部です。
アプライドアートって何?
「アプライドアート」、ちょっと難しいですが、
一言で言ってしまえば、実用的なモノにアートを応用する、アート。
絵画や彫刻などの純粋芸術(Fine Arts)に対して、美術を日常生活に応用したものと言われています。
工芸美術・家具、ジュエリー・装飾美術、広くは建築も含みます。
アートとデザインの境界線が曖昧で、もっと身近にアートが生活に溶け込むモノと、私は理解しています。
コンテンポラリージュエリーが誕生した1960年代は、学生運動、フランスの5月革命、アメリカのベトナム反戦運動。
ある一定の特権階級を否定し、ジュエリーの世界にも、ダイヤや金やプラチナの素材価値より、人の創造性や発想に重きを置くジュエリーをつくろう!
というのが、コンテンポラリージュエリーの始まりではないかと思っています。
MENTOSENの制作会社であり、そのフラッグショップであるSHINKO STUDIO は、ずっと何年もコンテンポラリージュエリーのアーティストの作品展を開催してきました。
今回開催した、高田麻帆は、MENTOSENのデザイナーもしている、まだ20代の若手です。
作品は、もちろん何十年もやっているアーティストには、かなわないかもしれません。
けれど、火を入れることで、シルバーに伸縮性を持たせたり。
通常、丸い線を使うところを、エッジのラインが美しく出る、四角い「角線」を使って、表情を出すなど、徐々に自分の世界をつくりつつあります。
若手に作品展示の機会を与える
現在、コンテンポラリージュエリーの若手の作品が、売ることを目的に展示されることは稀です。
でも、私は、実際に売ってみるって、とても大事な気がします。
確かに、美術館に収蔵されることを目的につくられるアートもあるでしょう。
けれど、何より、お客様が腹を痛めて作品を買ってくださる。
そういう社会とのつながる体験が、実感をもって作品作りに励むことができるきっかけにあるよう思います。
アートやデザインは人が自分と違うことを認める社会につながる
これは、まったく直接的な効果ではないかもしれないけれど、
アートやデザインが身近にある、日常の生活に溶け込んでいる社会というのは、いろんな人が生きやすく、開かれて入れ、寛容な気がします。
独裁国家や軍事国家などには、多様性を受け入れるデザインやアートの要素はとてもうすく感じます。
一方で、北欧などのモダンデザインが進んだ国は、多様性への理解があり、弱者にやさしい国のように思います。
それがすべてではないし、地域や国によってそのカタチは違うけれど、色々な価値観があっていい。
自分と人が違うことを寛容に認める社会。
やっぱり、そういう未来に向かって、私たちは何かしらしていきたいと思うのです。
それがMENTOSENというジュエリーをつくっている理由だと思います。
『MENTOSEN』はその輪郭
Maho Takada imperfection inside Silver925 ブローチ photo @satomiki
MENTOSENは、ジュエリーそのものだけではなく、1つの『輪郭』かな?と考えています。
MENTOSENというコレクションと共に、コンテンポラリージュエリーのアーティストの作品展を開催したり。
時には、おとなの遠足を開催し、地域の人たちとまじわったり。
そんなことも含めて、『MENTOSEN』なんです。
高田の作品展はまた来年開催の予定です。
若手の成長が楽しみです。
MENTOSEN プロデューサー・シンコーストゥディオ代表 米井
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ジュエリー クラフトマンの内田岳志の新潟のアトリエは、所狭しと工具で埋まっています。 さながら、工具だらけの要塞と言ったところ。
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