モダンデザインとドイツ
先日、リトアニアを訪れたその次に、ドイツミュンヘンも訪れました。ミュンヘン滞在の目的は、インホルゲンタというジュエリーの展示会を見てくること。そして、せっかくなので、ミュンヘンのギャラリーや美術館も見て回りました。9年前から、ミュンヘンでアーティスト活動をしているコンテンポラリージュエリー・アーティストの寺嶋孝佳さんが、ミュンヘンのギャラリーを案内してくれました。彼は、昨年2024年にコンテンポラリージュエリーのコンペ、シュムックで最高峰とされるホフマン賞を受賞したアーティストです。
バウハウスなどから始まった、モダンデザインをベースに、発展したドイツのアート、工芸、そしてジュエリーは今どんな状況なのかを知りたいとずっと思ってきました。
バウハウスは、1929年から14年だけ存在した、芸術学校です。ナチによってつぶされてしまったけれど、ここの教育理念は後に世界中に広まりました。機能的で無駄のないデザインは、モダンデザインに大きな役割をもたらしました。
ギャラリー
回ったギャラリーの中で、バイエルンアート&クラフト協会Bayerischer kunstgewerbeveのギャラリーは、一般の人でも入りやすく、アーティストのグッズ、作品なども手ごろな価格から買えて、楽しいギャラリーです。
私が行ったときはちょうど、OODD STUDIOS というテキスタイル系のアーティストの展示をしていました。制作動画を見ると、素材はナイロンなどを使用しているようですが、細かい手作業で出来上がっているのがわかりました。
思わず、テキスタイルの小さな作品を購入。
ピナコテーク・デア・モデルネ
ピナコテーク・デア・モデルネ (Pinakothek der Moderne) はミュンヘンにある、20世紀以降の現代アート、デザイン、建築などの国立美術館です。トップ画像の展示は有名ですね。
やはり、バウハウスの国だけあって、「デザイン」の展示がとても充実していました。日本人のデザインも多く、倉俣史朗の椅子、NINTENDOのゲーム機などの展示もありました。
さらに地下2階におりると、コンテンポラリージュエリーの常設展示があります。
ミュンヘン・ジュエリーウィークという、コンテンポラリージュエリーの祭典が毎年開催されますが、オープニングはこの美術館のエントランスで開催されるようです。
ドイツでは、ジュエリーをアートとして楽しむ人たちも多くいます。また、ジュエリーアーティストとデザインを行き来しているようなアーティストも多くいて、ジュエリーが楽しい。
モダンデザインがベースにあって、今の私たちの生活にあったシンプルで美しいラインがきちんとジュエリーに生きている。それでいて、クラフト(工芸)の手の仕事が引き継がれている。
そんな感覚が、今の時代のジュエリーには大事だと思います。日本には、まだまだ少ないジュエリーのモダンデザインの考え方。
デザインとは、社会の要望から生まれ、新しい社会をつくりだすために、今までなかった発想で、問題を解決することだと思っています。
だからそういう意識や感覚をもってデザインやものづくりをする。
そんなことも日本のジュエリーにも一石を投じていきたいと思うのでした。
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リトアニアに行ってきました
リトアニアの首都、ビリニュスに行ってきました。街のあちこちにアートがあり、一方で北欧的なモダンデザイン+素朴な伝統を感じる素敵な場所。
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折り紙がつなぐ 芸術・科学・産業
先日夏休み中の8/11日東大で開催された「折紙がつなぐ芸術・科学・産業 2024」に参加してきました。
折紙がつなぐ芸術・科学・産業 2024
このシンポジウムは東大の舘ラボが中心になって、様々な折紙の可能性を芸術、科学、産業分野でもさぐっていこうという、国の支援を受けての「学術変革領域研究」の一環です。
学術変革領域研究(B)「折紙がつなぐ」
当日は、今までは研究者しか参加しなかったようなシンポジウムが、もっと楽しく折り紙を愛する誰でも参加できる仕組みがたくさんあって、発表者の方々もとても面白い発表でした。
アメリカ在住のロシア人研究者:エカテリーナ・ルカシェヴァ Ekaterina Lukashevaさんの作品
登壇者は、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者やグラフィックデザイナー出身でトポロジーを研究しているイタリアのアーティスト、折り紙作家、生物学者、洋服デザイナーなど、その道で折り紙構造を用いて仕事をなしえている人たちでした。
いくつかを紹介すると、生物学者の近藤滋先生の発表は、「生物のどこが折り紙なの?」と思ったけれど、
カブトムシのツノがどのように出来上がるか?という研究で、これが、まさに折り紙によって(しわ)で出来上がっているという。
はさなぎの段階ではツノが突起していないそうで、脱皮する時に約100分位のすごいスピードであの立派なツノが出来上がる。
その謎をシワの折り紙構造で解明した。
また、印象深かったのは、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE デザイナー
宮前 義之のお話と実演。
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、布を織る段階で、熱を加えると一部の糸縮んで平面から立体をつくる構造の洋服を発表して、世界に衝撃を与えているけれど、
これが、人の創造性と、テクノロジーの融合であるということがとても分かった。
洋服をつくるとなると、そこに素材があって、手でつくっていくことを基本にしているので、なかなか新しい考えが生まれない。
一歩外界に出ることで、新しい可能性を思いつくようになる。
というお話を宮前さんはなさっていました。
そして、美しいラインというものは、だれが見ても美しいと思えるラインがあって、それを追求するために、気の遠くなるような時間を使って試行錯誤をしているということでした。
このラインは、おそらく合理的な数学的な理由があるのかもしれない。
そこに、人間的な感性を持ちこむことで、完成される。
「感覚」や「感性」という言葉は、得てしてアートやデザインの中でとても重要なこととされるけれど、その背景にはキット数学的な理論があるだろう。
そのように思うのです。
ゴミ箱も折り紙
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SICF25、MARKET部門に展示参加してきました
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微妙な人の感覚を表現するためデジタルを使う
「デジタル」という手段を使うことによって、人間が心地いいと思える『面』と『線』を生み出すことも、1つのものづくりの方法だと考えます。。
テクノロジーが、大量生産や効率化のためだけのツールではなく、血の通った人間の微妙な感覚を表現するため。
そのためにこそ、テクノロジーを使っていきたいと考えていきたいのです。
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By-Pass[バイ-パス] 人が着けて初めて生まれるカタチ 今回は一筆描きシリーズの一つです。
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