「デジタル」という手段を使うことによって、人間が心地いいと思える『面』と『線』を生み出すことも、1つのものづくりの方法だと考えます。。
テクノロジーが、大量生産や効率化のためだけのツールではなく、血の通った人間の微妙な感覚を表現するため。
そのためにこそ、テクノロジーを使っていきたいと考えていきたいのです。
]]>現在、秋の新作を制作中です。
MENTOSENの秋の新作はペンダントです。
秋になり、セーターや長袖のブラウスに、さっとつけるだけでちょっと楽しくなるペンダント。
『面』と『線』を考えぬいて、一ひねりしたデザインのペンダントをデザイン中。
『MENTOSEN』のデザインは、基本的に3Dキャドなどのデジタルを使って、最終的なかたちが出来上がります。
原案段階では、アナログに、紙で試作してみたり、真鍮(しんちゅう)の板を曲げてみたり、粘土を使ったりもします。
一方で、
「今まで、手ではできなかったデザインに挑戦してみる」
というのも、MENTOSENのデザインの大きな柱になっています。
デジタルだから可能になる。
ベジェ曲線を使った美しいライン。
連続パターンなど。
その他、発想次第で色々なことができる可能性を感じています。
新しい機能や、アプリとの連携が日々更新されるので、その新しい機能を使って、トップ画像の様な試作をしてみては、3Dプリンターで出力してみるという作業を繰り返しています。
ほぼボツなんですけれど。
新しい機能、から新しいかたちが可能になるのは楽しいです。
ベジェ曲線を使った美しいラインとは、例えば、イヤーカフのCrun[クルン]のようなラインです。
横から見た時
下から見た時
寝かしたときなど、その方向性によって、表情が違うように見えますが、
実は、かなり正確に均等な長さや角度を設定した後で、少しずらしたりしています。
Crun[クルン] Silver925 イヤーカフ 多方面から見て形が変化するカーブ
美しいカーブラインを描くためには、実はかなり正確な数値が必要で、人の勘だけでは、なんとなくやぼったいラインになってしまうことが、往々にしてあるように思います。
「デジタル」という手段を使うことによって、人間が心地いいと思える『面』と『線』を生み出すことも、1つのものづくりの方法だと考えます。。
テクノロジーが、大量生産や効率化のためだけのツールではなく、血の通った人間の微妙な感覚を表現するため。
そのためにこそ、テクノロジーを使っていきたいと考えていきたいのです。
By Yonei Akiko
]]>
By-Pass
[バイ-パス]
前回の、
『人』と『モノ』の関係を考える- Log[ログ] ピアス&バックキャッチでは、ピアスとバックキャッチをつけることによって、現れるカタチについて書きました。
今回は、One Stroke Line [一筆描き]シリーズのイヤーカフBy-Pass[バイ-パス] について書きます。
1本の四角い線(角線)が、一筆描きで出来上がるカタチです。
置いておくだけでも楽しい造形なのですが、 着けた時が、また面白い。
前後、左右、上下から、違うカタチが見えて来ます。
置いてある場合と、
身に着けた時、少し印象が違うでしょう?
詳しい構造は、By-Pass[バイ-パス] のページの画像ギャラリーの3D画像を動かしてみてください。
「このカタチどうやって耳に着けるの?」
「着けたらどうなるの?」
置いてあるこのイヤーカフを、はじめて見た人が、不思議がります。
私たちは、ちょっと楽しんで、
身に着けてみます。
耳に着けるからこそ、立体が宙に浮いて、色々な方向から見ることができる。
その時、そこに生まれるちょっとした驚きや、楽しみの共鳴のために、私たちはものづくりをしているのだろうと思うんです。
面白い造形が、人のからだを介することで、もっと面白くなるのではないかと、日々たくらんでいます。
それは、ジュエリーというモノだけができる、日常の喜びや勇気の源だから。
Log
[ログ]02
春の新作の一つのテーマは「人が着けて初めて生まれるカタチ」
今回はピアスとバックキャッチのシリーズLog[ログ]についてです。
Log[ログ]のシリーズは、耳の前後にカタチを配置することによって、『耳』というからだの一部も、造形の一つと考えて、つくられたジュエリーです。
Log[ログ]シリーズは今のところ、4種類ありますが、Log[ログ]02の構造について説明すると
まずピアスがこんな感じであります。
そしてそのキャッチがこちら
ピアスを耳に着けることで、こんなカタチが生まれます。
ジュエリーとは、ほとんどが金属で、人のからだからすると、とても異質なものです。
それなのに、人は太古の昔から金属や陶器、貝などの異質なものを身に着けてきました。
そこに、『人』と『モノ』の一つの関係性の原点があるように思えるのです。
そこで、私たちは、耳という人の『からだ』があるからこそ、生まれてくるカタチを考えてみました。
『人』と『モノ』の関係性を考えていくことは、モノが溢れてしまった時代に、私たちが何を所有し、何を手放すべきなのか?
そんなことを考える、ちょっとした契機になればいいなと思います。
一方で「このカタチ面白いね」とか、「このラインの流れが気持ちいいね」なんて思えるモノをつくりだして、提案するのが、新しい扉を開くデザインの力かもしれません。
このLog[ログ]シリーズ。
片耳だけでも、ピアスだけ、バックキャッチだけ、色もシルバーとゴールドから自由にコーディネイトできるようにしました。
最後のデザインは、着ける人自身がする。
着ける人が、自分で決める余地を残しました。
『つける人』、『つくる人』がつながって、完成するピアス&バックキャッチです。
Log[ログ]のシリーズは02以外に3つ計4つ
MENTOSENは、2023年4/22㈯、ピアス&バックキャッチ Log[ログ]とイヤーカフOne Stroke Line[ワンストロークライン]を発表しました。
その新作発表ウィークが4/22~30日まで、東京、世田谷のシンコーストゥディオで開催されました。
素直に、私たちも楽しかった新作ウィークでした。
初日には、発表したピアス&バックキャッチのコレクション『Log02』を巨大化させたAR(仮想現実)で、こんな写真も撮って遊んでしまったり。
多面体工作キットをプレゼントとしてお渡ししたり
こんな多面体が簡単にできるセット↓
多分、一般的なジュエリーの新作イベントとは全然違うと思うのですが、それはそれで、私たちらしいなと思うのでした。
そして、なのより、来て下さった方々が楽しんでいたのが印象的でした。
世界に名だたるジュエリーブランド。
一方で、最近とても多い個人作家さんたち。
流行りの色々なジェムストーンもきれいだ。
だけど、今生きていく私たちの感覚とそのジュエリーはちょっと違うんだよなあ?
私たちは、そんな「ジュエリー」というカテゴリーの中に押し込められてしまうことにとても窮屈を感じるのです。
モノがモノとして意味を持つには、人とどういう関係性があるのかってことが、とても大事なことのように思えます。
『MENTOSEN』というコレクションでは、従来のジュエリーの価値観とちょっと違う楽しみ方や、クスっと笑っちゃう瞬間があったりしたらいいなと思うのです。
一般的なコマーシャル「ジュエリー」っていうカテゴリーの中に納まらないからこそ、世に出す意味があるように思えます。
]]>
山中俊俊治研究室は、山中俊治さんは、先端技術エンジニアリングとデザインとの関わりをテーマに、「美しい義足」などデザイン性に優れたプロダクトを世に出してきました。
数十年前まで、エンジニアリング(工業的な機構)やデジタルは、『美しいデザイン』というものに、つながっていく思想が希薄でした。
それを、この15年間で、新しいプロダクトを生み出し、デザイン性のエンジニア、あるいはエンジニアリングやデジタルの知識豊富なデザイナー、またはアーティストを育ててきました。
山中俊治さんのプロダクトの基礎は、構想段階で描かれるこの原画。
精密で、そこにアイデアが確立し、つまっている。
工業製品なのに、とても美しいと、思ってしまうのです。
そして、構想段階できちんと練られたアイデアは、CAD(立体造形ソフト)に落としてもきちんと製図できる。
私たちが、日頃、デザインを考えてCADにデータを落としていくときの思考プロセスは、いったいどうだろうか。
原案構想段階で、ここまで立体を捉えられているだろうか?と言えば、なかなか難しい。
エンジニアリングという、まさに機械の機構を考えつくすことで、そこに美しさが生まれるのは、とても興味深いことです。
MENTOSENのテーマ
『デザインとものづくり-人とデジタルの関係を考える』
の一つの解決策は、『機構』をデザインの要素に加え、それが人間的な温かみをつくりだしていくことなのかもしれませんね。
どんなにテクノロジーを駆使しても、最終的にはそこに人の幸福感が生まれないモノはあまり意味がないでしょう。
あらためて、テクノロジーとデザインのいい距離感を感じました。
]]>バウハウスで学んだ数少ない日本人、山脇巌の設計による個人のアトリエ「三岸アトリエ」
バウハウスは、1919年にドイツ、ヴァイマールにできた、革新的な美術学校で、ヒトラー政権下に閉校に追い込まれるまで、わずか14年の歴史しかありません。
けれど、その14年の中に、現在のモダニズムの源流をつくりました。
この時代は、工場で大量にモノをつくり販売するという時代の幕開けでした。
量産の中にも、人々が快適に、創造的に生きられるためのデザインとものづくりを提唱したのがバウハウスの功績ではないでしょうか。
機能的だから美しい。
合理的でも美しい。
それまでのヨーロッパのデザインは、装飾がこんでいる、手がかかっているものが素晴らしいとされていました。
無駄なものをそぎ落とし、
新しい素材を使って、
技術を使って、
創造性がそこにあれば、普通の人々にもデザイン性に満ちた豊かな生活を提供できる。
ドイツのヒトラー政権下でなされた、奇跡的な教育と言えるでしょう。
その後、バウハウスで教鞭をとった優秀な人たちは、世界中に亡命というかたちで散って行きました。
それが、バウハウスの精神を世界中に広げ、モダンデザインが広がっていった一つの要因だったのでしょう。
バウハウスで教鞭をとったカンディンスキーが、提唱した「点と線から面へ」。
美しい『面』、美しい『線』、というとても基本的なことを、大切にモノをつくって行く。
新しい技術があったら、貪欲に取り入れていく。
私たちの『MENTOSEN』は、バウハウスのものづくりにも影響をうけているといっていいでしょう。
]]>中野区鷺宮(さぎのみや)にある「三岸好太郎、節子」のアトリエに行ってきました。
このアトリエが文化財として指定されているのは、この二人の画家のアトリエという以上に、バウハウスで学んだ数少ない日本人、山脇巌の設計によるものだからです。
1936年に建ったという。
今回、建築を見に行ったのだけれど、アトリエにたどり着いてから、ここの主である、三岸節子のことをハッと思い出した。
数年前、大磯のアトリエで桜の絵を描き上げる晩年の節子のドキュメンタリーを見ていたのです。この鷺宮のアトリエは好太郎が山脇巌に発注したのだけれど、結局住む前に31歳で早世してしまった。
その後に残ったのは、3人の子供と、アトリエ建設の借金だったそうで、その後、節子は死に物狂いで子供を育てながら、絵を描いたといいます。
このアトリエには、節子の汗と涙がおちているのかな?そんなことを、しみじみ感じるのでした。
その後、節子は、画壇での女性の地位向上にも尽力したり、60歳を過ぎてフランスに移住、20年後帰って来て桜の絵に向き合うようになった。
94歳で亡くなるまで、画家という仕事にすべてをつぎ込んだ人だった。
篠田桃紅も同じように、逆境の中で、激しく、つよい魂を持ち続けた女性たちだ。この時代、女性が絵を描くことが、どんなに大変であっただろうか。
そういう、すべてを乗り越えて、心が鋼のように強くなって、至ることができるのが真の芸術家なんだと思う。
そして次回は、やっとバウハウスのことを書こうと思います。
テクノロジーは、手段であって、目的ではない。
だから、最終的につくりたいモノがあるとき、それが新しいテクノロジーとか、古いとかそういうことは関係ないのかもしれません。
MENTOSEN(メントセン)のジュエリーは、原案段階は手で描くにしても、最終的には3DCAD(キャド)という立体造形ソフトにデータを落とし込んでいます。
あるいは、CADだからこそできるデザインというのがあって、テクノロジーが使えるからこそ生まれるデザインというのも、大事にしています。
新しい技術で、新しい表現ができたり、
今まで、できなかったことができたとき、かなり感動をし、
さらに「こんなこともできるんじゃない?」という発想が浮かびます。
人々の気持ちを反映したモノをつくろうとした時、デザイナー自身が新しいテクノロジーを使いこなし、製造段階にまで踏み込んでいくことで、より柔軟な新しい表現ができるのではないでしょうか。
デジタルを活用するからこそ実現できる『線』や『面』があります。
また、さらに、デジタルテクノロジーは、様々な分野の人々と共有し交わっていける1つの言語だとも感じます。
違う社会生活を送っている人たちと関わっていくことで、デザインはより広く開かれた視野で、新しいものを生み出すことが可能になるでしょう。
CAD,3DプリンターやCNC(コンピュータ切削)、レーザーカットなどの技術を使って、新しい発想のジュエリーをつくります。
今、感性を表現するために、デジタルテクノロジーを使うのがとても楽しい。
いまやテクノロジーは、効率化のためだけに使われる時代から、創造性や感性を表現するために、相棒のように一緒に歩む時代に変化してきました。
そして、最後は人の手が入って、手でしかできない仕事を、魂を込めて仕上げる。
そんなものづくりが、今必要とされているように思います。
by Akiko Yonei
Maho Takada function stainless-sope Silver925 リング photo @satomiki
10月14~23まで、シンコーストゥディオのお店で開催された、「高田麻帆作品展」が無事終了しました。
期間中は、たくさんの方々に来ていただき、心から感謝いたします。
街のお店で、コンテンポラリージュエリーという、アートとしてのジュエリーを紹介できること、
そして、ギャラリーではなく、路面に接した街のお店だからこそ、普通の方々がふらっと立ち寄りやすかったのかもしれません。
コンテンポラリージュエリーは、1960年代にヨーロッパで誕生したアプライドアートの一部です。
「アプライドアート」、ちょっと難しいですが、
一言で言ってしまえば、実用的なモノにアートを応用する、アート。
絵画や彫刻などの純粋芸術(Fine Arts)に対して、美術を日常生活に応用したものと言われています。
工芸美術・家具、ジュエリー・装飾美術、広くは建築も含みます。
アートとデザインの境界線が曖昧で、もっと身近にアートが生活に溶け込むモノと、私は理解しています。
コンテンポラリージュエリーが誕生した1960年代は、学生運動、フランスの5月革命、アメリカのベトナム反戦運動。
ある一定の特権階級を否定し、ジュエリーの世界にも、ダイヤや金やプラチナの素材価値より、人の創造性や発想に重きを置くジュエリーをつくろう!
というのが、コンテンポラリージュエリーの始まりではないかと思っています。
MENTOSENの制作会社であり、そのフラッグショップであるSHINKO STUDIO は、ずっと何年もコンテンポラリージュエリーのアーティストの作品展を開催してきました。
今回開催した、高田麻帆は、MENTOSENのデザイナーもしている、まだ20代の若手です。
作品は、もちろん何十年もやっているアーティストには、かなわないかもしれません。
けれど、火を入れることで、シルバーに伸縮性を持たせたり。
通常、丸い線を使うところを、エッジのラインが美しく出る、四角い「角線」を使って、表情を出すなど、徐々に自分の世界をつくりつつあります。
現在、コンテンポラリージュエリーの若手の作品が、売ることを目的に展示されることは稀です。
でも、私は、実際に売ってみるって、とても大事な気がします。
確かに、美術館に収蔵されることを目的につくられるアートもあるでしょう。
けれど、何より、お客様が腹を痛めて作品を買ってくださる。
そういう社会とのつながる体験が、実感をもって作品作りに励むことができるきっかけにあるよう思います。
これは、まったく直接的な効果ではないかもしれないけれど、
アートやデザインが身近にある、日常の生活に溶け込んでいる社会というのは、いろんな人が生きやすく、開かれて入れ、寛容な気がします。
独裁国家や軍事国家などには、多様性を受け入れるデザインやアートの要素はとてもうすく感じます。
一方で、北欧などのモダンデザインが進んだ国は、多様性への理解があり、弱者にやさしい国のように思います。
それがすべてではないし、地域や国によってそのカタチは違うけれど、色々な価値観があっていい。
自分と人が違うことを寛容に認める社会。
やっぱり、そういう未来に向かって、私たちは何かしらしていきたいと思うのです。
それがMENTOSENというジュエリーをつくっている理由だと思います。
Maho Takada imperfection inside Silver925 ブローチ photo @satomiki
MENTOSENは、ジュエリーそのものだけではなく、1つの『輪郭』かな?と考えています。
MENTOSENというコレクションと共に、コンテンポラリージュエリーのアーティストの作品展を開催したり。
時には、おとなの遠足を開催し、地域の人たちとまじわったり。
そんなことも含めて、『MENTOSEN』なんです。
高田の作品展はまた来年開催の予定です。
若手の成長が楽しみです。
MENTOSEN プロデューサー・シンコーストゥディオ代表 米井
]]>ジュエリー クラフトマンの内田岳志の新潟のアトリエは、所狭しと工具で埋まっています。
さながら、ジュエリーの制作要塞と言ったところ。
振り向いたら、すぐに次の作業にかかれるように、
仕事の手順が滑らかに進んでいくように、
様々な工具や機器の設置場所が工夫されています。
そもそも、コロナ禍の苦しい状況でも、MENTOSENのコレクションを、「新しくつくって発表していこう」とおもいきれたのは、
彼の仕事への情熱と、技術と感性の裏付けがあったからこそ。
私たちMENTOSENのデザインを発想する側は、社会の流れに沿った要望としてのデザインというものを、常に考えるけれど、
それを実際に金属に落とし込んで、おもちゃではなく、ジュエリーレベルの製品に仕上げるのは、実はとても難しい。
デザイン上では、可能でも、クラフトマンの技術が追いついていないと実現はおぼつかない。
シンコーストゥディオのコレクションや、毎回違う面倒なカスタムオーダーの一点一点のデザインと制作。
そのたびに、私たちはどれだけ対話をしてきたのだろうと、今までの制作を思いだします。
「こうしたらもっとやりやすいんじゃないか?」とか
「こうしたらもっとかっこいいじゃないか?」とか
デザインとテクニック(技術)は一体であって、
時には、テクニック(技術)がデザインのきっかけになる。
それも、とても自然なことだと、私たちデザイン側も考えています。
お互いのアイデアを出し合って、その対話は実はものづくりの醍醐味で、その時間はとても楽しい。
とはいえ、その楽しさは、実は彼のとてつもない技術と、細かい仕事の組立と頭脳に支えられています。
新しいことにチャレンジするのは、勇気がいるし、時間がかかる。
けれど、彼はそれをあえてやる方を、いつも選びます。
(後で冷や汗をいっぱいかいていると思うけれど)
だから、私たちは思いっきり、今までにない新しいことに挑戦することができているのです。
Sorow[そろう]というリングのダイヤの石留は、ダイヤのガードル部分(ダイヤの幅の一番大きい部分)を、リングの壁面に潜り込ませいます。
そして反対側を1本の爪で留めるという、ちょっとアクロバティックな石留。
それによって、指に装着した時、きれいな一本のカーブラインが生まれます。
さらにもう一本のSorow[そろう]のリングとぴったり重なりあいます。
またリング側面はの鏨(たがね)という工具を使って、まっすぐなラインを彫り込む金属の表現をしています。
それによって、手を動かすたびに微妙な光の反射が生まれます。
この一つ一つの表現が、
私たちの一つ一つ対話の中で生まれてきました。
その対話に答えて、私たちの想像を上回る感性度で仕上げてくる彼の仕事には、日々驚かされています。
【内田 岳志 -Takeshi Uchida】
ジュエリークラフトマン。エンゼルリング代表。一級貴金属装身具製作技能士。
技能グランプリ、JJA ジュエリーデザインアワード等受賞歴多数。
シンコーストゥディオ 米井
]]>
「生きる場所に根ざしたものづくり - 新潟の職人たち」で書いた新潟のジュエリー職人丸山さん。
彼女は、2人のお子さんのお母さんでもあります。
ジュエリーの制作の現場、特に職人は、圧倒的に男性の世界です。
デザイナーや販売する人には圧倒的に女性が多いのですが、
職人となると、まず数自体が少なく、さらに本当に実力のある女性は数少ないでしょう。
丸山が制作する Shikaku[しかく]Pt900/K18・Silver925/K18 リング
丸山は、若手職人の登竜門、技能五輪装身具部門で金メダルを獲得。
その後も、結婚、出産の人生の転機を迎えながらも、10年以上職人として仕事を続けてきた、女性職人のパイオニア的な存在です。
一般的なジュエリーデザイナーは、平面でデザインを描いて職人に渡します。
それを立体にする時、実はデザイナーが平面で考えているだけでは説明しきれていないこともしばしば。
そのほとんどの場合、その想像の部分は職人に託されることとなります。
そういったときに、大事になってくるのは職人の感性と技術。
洋服もそうですが、ジュエリーなど身に着けるモノは、
「それをなぜその人が、今の時代に、何を考えて着けるのか?」
ということを感じ取っていなければ、社会に先んじた提案をするジュエリーをつくりだすのは難しいのではないでしょうか。
つまり、古い価値観のまま、アップデートされない。
ジュエリーは本来、素材の希少性と高度な技術でつくるモノなので、
そのデザインや、時代背景よりも、
より高い技術で、より精緻につくることが第一だと言われるかもしれません。
でも、その考え方には、「つける人」不在のある種つくる側の欺瞞(ぎまん)があるのではないか?
と、着ける側の人間である私は考えてしまうときがあります。
ちょっとしたライン取りや、チェーンを通すバチカンの部分のわずかな大きさの違い、チェーンの組み合わせ。
ダイヤがいっぱい留まっていればいいか?
キラキラしていればいいのか?
それが今の女性の生き方や考え方に合っているか?
そういうことを、
「わかるよね、今私たちはこう感じている」と
説明しなくてもわかってくれる女性職人の存在はとってもありがたいのです。
そこに「つける人」不在のものづくりの解決の糸口があるようにも感じます。
職人の仕事は、納期が決まっていて、その高度な仕事の割に3Kのイメージが強いでしょう。
子育てや家庭生活は、いまや決して女性だけの問題ではないけれど、とはいうものの、やはり女性への負担は大きい。
思いっきり働きたいけれど、子供が熱を出して思うように仕事ができず、他の人に迷惑をかけてしまうとか、
ごはんづくりや掃除や洗濯、子供の学校や保育園のこと。
そんなことも、結構脳みそをと体力を使う。
(まあ、本来女性だけの問題ではないので、苦労している男性の方々もたくさんいるでしょう)
けれども、そんな経験すべてが、最終的には仕事の深みになるんじゃないかと思っています。
だって、「つける人」の多くは、そういう経験をしながら、生きている人がかなりいるからだ。
工房の壁には、丸山子供画伯たちの絵が
私は、「つける人」から始まって、デザインしたり、つくったり、あるいは石を供給してくれる人達なども含めて、すべてを含めてしてモノは出来上がると思います。
とはいえ、職人と言うからには仕事の質は絶対。
ジュエリーの職人の世界には、信じられないほどの技術と情熱を持った高みいる人たちがいます。
確かに、そういった男性のように働き盛りの時間を、それだけに費やすことはできないかもしれない。
けれど、長い人生、細く長く続けて、自分なりの意味のある仕事をしていくことで、だれにもできない仕事をできるようにきっとなる。
そのためは、いつもパイオニアでなきゃいけないけれど。
だから、丸山には、ずっとパイオニア精神で、けれど疲れたら時々休みつつ、技と感性や人間力を高めていってほしいと願っています。
まあ、結局仕事は人間力なんです。
多分、そこに行きつく。
だから、究極、男女の差もそこには関係ないかもしれない。
多様性が大事なんです。
どこの現場にも。
そう思う、燕三条の訪問でした。
生きる場所に根ざしたものづくり - 新潟の職人たち - 丸山あゆみ 1
(MENTOSENの場合)
MENTOSENの場合は、デザイナー自身が、CADという立体造形ソフトで3Dプリンターで出力、あるいは鋳造までデザイナー側がしてしまうことが多いです。少なくとも、3Dプリンターで出力して、かたちの細部をきちんと職人に伝えられるように、職人が仕事がしやすいようしています。仕事に関わるチームの認識が統一されることはとても大切です。
MENTOSEN 米井亜紀子
]]>
先日、MENTOSENの制作を担ってくれている職人たちの新潟の仕事場に行ってきました。
一日目は、燕三条(三条市)の職人丸山あゆみの仕事場。
丸山は、MENTOSENのShikaku[しかく]のリングやKosa[こうさ]のピアスをつくっています。
高校を卒業すると、18歳で地元新潟の工房に弟子入り、就職。
腕を磨き、技能五輪ではゴールドメダリストを獲得しています。
そして、国家資格の一級技能士資格者。
ジュエリーはとても華やかなモノと思われがちですが、実際に制作となると、きちんとつくれるようになるまで、10年近くの歳月を要します。
その後、天井知らずの技術の高みを目指して修練を積んでいくことになります。
丸山制作のKosa[こうさ] Pakku と Kosa[こうさ]Kakko
すべてに速さを求められる今の時代に、10年近い時間を要する仕事を追求していくことは、
都会に住む若者たちにはなかなか難しい。
新潟、燕三条では、その昔から金属加工の仕事が盛んで、今も工業用の金型、スプーンなのどカトラリーの仕事が高く評価されています。
その、起源は弥彦山という山のふもとで銅が取れたためらしいです。
その後、銅を使ったやかんの制作やキセルをつくる仕事が盛んになり、戦後工業用金属加工が地場産業となり、今に至っています。
そんなことを考えると、丸山が、ジュエリー制作の道へ進んだのは、金属の種類や大きさは違えど、ごく自然なことかもしれません。
丸山の仕事場の前には、五十嵐(いからし)川という雄大な川が流れています。
彼女は、毎日、この山々の景色を見ながら、制作をしています。
天職というのは、最初からその人にすごい才能があって、その道に入るというのは、実は稀なことで、
その土地に生まれたとか、親が何の仕事をしているとか、そんな不可抗力的にもたらされた偶然によって、見つかるものなのかもしれない。
民藝運動の父、柳宗悦が、「民藝」についての説明で、「他力性」という言葉を上げていて、
『個人の力というより、風土や自然の恵み、そして伝統の力など、目に見えない大きな力によって支えられているもの』
と書いています。
現代にあっても、新潟ではそれが息づいているように思えます。
都会にはない、ゆっくりとした時間と土地や地域の持つ力。
その土地で、ひたすらものづくりをする職人たちに敬服すると同時に、一緒にチームとして仕事ができることに幸福感を持たずにはいられません。
「つける人」不在解決の糸口-女性職人- 新潟の職人たち - 丸山あゆみ 2
MENTOSEN 米井亜紀子
]]>
2022年7月9日渋谷区文化センター大和田で、
「つける」と「装う」の微妙な関係 - コンテンポラリージュエリーと日常の接近 [ジュエリー論 秋山真樹子さんのトークイベント]が開催されました。
前半は、コンテンポラリージュエリーを知らない方でも、わかるようにざっとコンテンポラリージュエリーの歴史的な話を、後半は今海外で起こっている新しいムーブメントのお話をしていただきました。
秋山真樹子さんは、日本では数少ない、コンテンポラリージュエリーの評論ができる方であり、歴史的背景に基づいた膨大な知識を持っています。
コンテンポラリージュエリーをあまり知らない方は、秋山さんのウェブ記事「コンテンポラリージュエリーことはじめ」を読むとわかりやすいでしょう。
2022年4/16土曜日、『MENTOSEN』のお店、シンコーストゥディオが主催した第2回目のおとなの遠足「谷沢川沿いに行く!古墳と等々力渓谷」を開催しました。
この遠足は、コロナの始まった2020年、人との交流が疎遠になってなにか楽しいことはできないかな?
歩いて感じる・地域を楽しむ「おとなの遠足」とタイトルをつけて、地域に住む人たちを誘って始めた遠足です。
遠くにいけないなら地元を知ろうよ。
狭い所で密がだめなら、屋外で遠足しよう!
できることを少しず工夫して、人と人がつながるきっかけになったらと思い始めた遠足です。
前回の遠足は国分寺崖線を岡本静嘉堂文庫あたりまで歩きました。
第1回 歩いて感じる・地域を楽しむ「おとなの遠足」
今回は、谷沢川という川をたどって歩いていきました。
等々力渓谷のことは知っているけれど、そこに流れている川はどこから来たかを考えたことがなかった。
私も長く世田谷に住んでいますが、その水がどこから来ているか知りませんでした。
色々調べてみると、谷沢(やざわ)川という川が等々力渓谷の源流の一つであり、しかもその川は、どうやら近所の農園周辺の湧き水が始まりらしいということがわかりました。
当日は、世田谷区桜丘にある中杉キッチンガーデンの農園主、中杉玲子さんにご案内いただいて、世田谷区桜丘4丁目付近に小さな水路を発見。
そのそばには、雨の時溢れた水をためる遊水地公園までありました。
その後、暗渠になってしまう谷沢川を追いかけ、途中「谷沢川湧水池跡」の碑を発見。
用賀を超えて、首都高の下で、やっと谷沢川は姿を現します。
国道246号線を渡ると谷沢川の両脇は遊歩道になって、ハナミズキがきれいでした。
その後、野毛大塚古墳→等々力渓谷、横穴古墳などを見て回って、はるか古墳時代の世田谷を思い、同じ地を踏みしめているロマンを感じる時間でした。
朝方は雨だった天気も、カラッと気持ちよく晴れて、久しぶりに皆さんいい笑顔で「はい!チーズ」
全長およそ7Kmの距離を、今日初めて会ったような人たちが、何でもない会話をしながら、歩きました。
春の空気を感じたり、景色を見たり、楽しみ方は人それぞれ。
一方で、一つ共通しているのは、自分が住んでいる地域を楽しもうという気持ちでしょうか?
そして出会った人たちとも、偶然にも、今日会えたということに、ちょっと心がときめきます。
今は、ネットでなんでも検索し、予約していく時代。
なんでも予定を立てて、動く時代。
でも、偶然の出来事って、思いっきり気持ちがドキドキして楽しいんですね。
歩く道やスケジュールも、臨機応変に変えて、参加者の方々の方が、より地域のことを知っていたりして、突然先生になっていただきました。
ジュエリーショップでなんで遠足?
正直、主催している、私たちもわからないけれど、
地域の人たちと楽しめることを一つずつやっていくことと、
未来を見据えた新しいデザインやものづくりを提案をしていくことは、
きっとどこかでつながっている。
そう信じたい。
閉塞感にとらわれている時代の中で、
楽観的(ポジティブ)にものごとを捉えていくには、なにげない日常の人のつながりと、未来志向の「この先に、ワクワクすることがあるだろう」という気持ちが大事だと思います。
地域の人と関わることで、今人々が感じていることを肌で感じる必要があるから、きっと私たちにこの「遠足」に、意義を感じているのでしょう。
何より、久しぶりに、晴れやかに楽しかった。
わくわくした気持ちを提案するのが、デザインであり、幸福につながるとしたら、
それが、私たちの地域にあるお店の役割であり、それは私たちのものづくりとつながっていくと思います。
今回嬉しかったのは、遠足に参加した何人かの方々が、うちでつくったジュエリーを着けて遠足に参加してくださったことです。
スニーカーにズボンにジュエリーなんです。
今は。そしてこれからも、多分。
デザインとローカル。
得てして、それは感性の優れたデザインとは反対のベクトルを向いているように思われがちだけれど、
人々の心地いい生活には、デザインを味わう感受性が大切だと思います。
一方で、デザインする側も、人々の中に飛び込んで、実感を得てデザインをしなければならない。
私たちが昨年リリースした『MENTOSEN』は、『面』や『線』の美しさを追求して
「複雑化してしまった世の中で、周りの装飾や雑念を払って、本当に大切なのはどんな輪郭だったのか、
どんなことだったのかを考えてみよう」ということを問いかけています。
デザインと地域社会。
その答えは、まず足元から、
身近な人たちと楽しむことから、それがシンプルに事を考えるヒントなのかもしれないと思う遠足でした。
とにかく、楽しかった。
また企画します。
MENTOSEN 米井
MENTOSENのジュエリーの多くは、CADで制作した立体造形を、3Dプリンターで出力したり、CNCという切削をすることで、原型がつくられています。
CADで造形して3Dプリンターで出力することがすべていいとは限らないですが、
MENTOSENでは、今まで手ではできなかったデザインに挑戦することが一つの目的なので、あえてデジタルを使っています。
デジタルを使うと、何ができるか。
例えばShikaku[しかく]のリングは、2mm角の立方体がある角度を保って、360°回っています。
まず、これを手で原型を正確につくろうすると、かなりの時間がかかります。
また、リングにはサイズがあるので、サイズごとに立方体の数を増やしたり、減らしたりしていかなければいけません。
正直、コスト的に合いません。
だから、こういったデザインは CADや3Dプリンターをつかうことによって、初めて世に販売できるデザインなのです。
コンピューター上のデザインは、金とプラチナ(シルバー)部分を、別々にきりはなすことができます。
こんな感じに、プラチナの部分をつくり
残りの金の部分をつくります。
もちろん、それを鋳造して金属にしていくのは、実はかなり人間の勘であったり、経験であったりして、その話はまた後日したいと思います。
おそらく、CADや3Dプリンターを使いこなせる人材はたくさん世の中にいると思います。
その割にデザインに特化した、デジタルデザイン(CADなどコンピューターでデザインされたデザイン)ならではのジュエリーがなかなか生まれないように思います。
その理由は一つには、CADや3Dプリンターを使える人が、圧倒的にデザイン系ではなく、技術系、職人系の人であることが多いからでしょう。
デザインとデジタルを操る人の溝が、そこにはあります。
今までデジタルは、量産や効率化のために使われてきました。
だから、多くの今までのデジタルの使われ方は、「効率的にいかにつくるか?」という視点に立ったものづくりが多かったように思います。
一方で、CADや3Dプリンターを使えても、実際にそれを生産体制を考えて、一般的なコスト内に収めるには、色々な発想の転換や、様々な分野の人との新しい発想の出し合いが必要になるでしょう。
また、ジュエリーにとって身につけたときの心地よさや耐久性も大切です。
ジュエリーがほかのモノと違うのは、毎日身に着けていても壊れない。
100年レベルでの耐久性や永劫性です。
ジュエリーは、本当に長く長く、わたしたちデザインした人間が死んだ後も使っていただけるように設計しなければいけません。
そんなことが、実に難しい。
一方で、色々新しいことにチャレンジしていくことは、楽しい。
結局、人の新しいことをしていくことが、「楽しい」という、共通の気持ちが、すべての『線』すべての『面』に凝縮されると思うのです。
デザインの視点からデジタルを使うこと。
それは、ある意味、今まであったジュエリーのあり方に、抵抗していくことなのかもしれません。
今までできなかったデザイン、ものづくりを通して、もっと多様なジュエリーやモノが世の中に出ていく。
それが、人の色々な生き方をやさしく後押しする一歩に感じるのです。
By Akiko Yonei
ジュエリーは長い間、その素材価値のためか、富や名誉の象徴としてつくられてきました。
金の価値や、石の価値。
確かに、ジュエリーの大切な一要素は、体に身に着けるので、その耐久性がとても大事です。
変化しない金やプラチナ、高度が高く美しく、壊れにくい石=貴石(ダイヤやサファイヤなどの)が必要でしょう。
けれどいま、私たちは、ただその素材価値や、石の価値だけのジュエリーを着けたいか?というと、多分、少し違うのではと思うのです。
大量生産、大量消費はプロダクトの画一化をもたらしました。
それは、買う人にとって、買いやすい価格帯を提供するものだし、
一般の人が手に取りやすい方法を、制作者たちがが努力を重ねてつくりだしてきた努力のたまものです。
その制作工程の工夫は、もちろん私たちがつくるジュエリーに大きく反映されています。
そのうえで、
世の中のモノは、つくりやすいモノ、売りやすいモノであふれてきてしまったように思います。
人間らしい、微妙な感性とか、感覚とか、
こんなライン、こんな造形、質感がきれいだね...とか、
そんなことを、身に着ける人たちと共に通じ合える瞬間がモノづくりの、そして、モノを所有する醍醐味だと思うのです。
そこに、今までにない新しい感覚や制作技術を取り入れることによって、新しいなにかを伝えられたなと思います。
私たちがたぶん、少し言いたいのは、「画一的な人間像、お決まりの男性像、女性像は、そんなにいないゾ!」ということです。
かわいくて、きれいなら、ジュエリーはそれでいいのか?
私たちはそんなに、かわいくないし、きれいでもないし、みんな変わっていて、でも凛として自分の価値観で生きていくよ。
そういう価値観が、広く認められることが、多分多様性を認めるってことなんだと..
多くの言葉より、自分たちのつくるモノで示そうと思う日々です。
]]>
MENTOSENの制作には、3Dプリンターが必須です。
原型を3Dプリンターで出力しない場合でも、デザイナー、職人その他の人と立体でデザインの感覚を共有するために、出力造形がとても大切なコミュニケーションツールとなります。
私たちが様々なプロフェッショナルとチームを組んで仕事をする時、一つの『線』一つの『面』の意識の共有は、とても大切なことなんです。
3Dプリンターを使うようになって最大の喜びは、どんなカーブラインを目指しているかをみんなで共通認識できるようになったことでしょう。
デザインと制作のコミュニケーション力が飛躍的に上がったと思います。
さらに、MESNTOSENの制作者たちは日本、あるいは海外にも散らばっていて、瞬時に意識を共有できるということは、とても頼もしいことなのです。
最初に考えたデザインの美しいラインや、かたちが制作協力者に正確に伝わる。
「こうしたら、もっとかっこいいよね」とか「こんな風にやったらもっと仕事が効率化されるよね」とか、そんな活発な会話ができることが楽しいのです。
また、そんなコミュニケーションを交わすことが制作者にとって楽しくてしょうがない。
私たちにとって、CADや3Dプリンターは、大切なコミュニケーションツールになりました。
けれども3Dプリンターは、私たちにとっては一つの手段です。
そのデジタル技術は、効率化だけではなく、もっと楽しく、新しく、独自性に富んでいなければいけない。
デジタルテクノロジーが、大量生産や効率化のためだけのツールではなく、血の通った人間の微妙な感覚を表現するために私たちは使っていきたいのです。
その一方で、身に着けていて心地よく、耐久性があり、生活の一部として存在するプロダクトであること。
そんなものづくりが私たちはめざします。
3Dプリンター出力後、製品につくり上げていくのは、かなりアナログな人間の感性です。
コンピューターや3Dプリンターを使うことで、新しい活発な制作のコミュニケーションが生まれる。
そして、その結果意味あるものづくりができることが、一番大事だと思うのです。
by Akiko Yonei
]]>ちょっと面白いプレゼントを用意しました。 3月にスタートするクラウドファンディングのリターンとして準備しています。
MENTOSENが大切にしている『面』や『線』を折紙で体感していただこうと考えつくりました。
たった3枚の紙から、5~10分あれば簡単につくれてしまいます。
曲線折紙は、折紙工学の世界では一番熱い研究課題だそうです。
今回は私、米井が構造を調べて、製図、カット、私たちでほぼ自作しました。
制作キットの内容はー
・きれいな曲線の折線が入った短冊状の紙(
カーブのラインの折筋はがポイント。)
・オーナメント用の正絹の組紐。
・そして、動画のQRコードなどが入っています。
大きさは、手のひらサイズ。
クリスマスのオーナメントにもいいですね。
たった3枚の紙ですが、ちょっとしたカーブ折線の筋をつけることで、驚くほど簡単に、美しい立体が出来上がります。
つくり方は、動画をつくってMENTOSEN のYouTube動画に配信しています。
見るだけでも楽しいので、見てください。
そしてよければ、MENTOSENのチャンネル登録や「いいね」もお願いします。
MENTOSENがもう一つ大切にしているのが、人の手の仕事。
このプレゼントには、最終的に人がつくり上げる楽しみを、お客様にも楽しんでほしいと思って、あえて「制作キット」をつくりました。
2022年1/16(日)まで、お店やこのウェブショップで15,000円以上ご注文になった方にこの「プロップボール制作キット」を差し上げます。
この
どうやって、『面』と『線』の美しさを伝えたらいいだろう?
と思ったときに、「折紙を折ってもらったら、きっと楽しいだろうな?」と思い立ち、この曲線折紙のプロップボールのキットをつくりました。
実は、結構時間がかかってしまって、
ジュエリーをつくらなければいけないのに、折紙をつくることに熱中してしまいました(笑。
差し上げるのは、ほんの3枚の紙と、紐なんです。
でもそこに、人の英知と、美的感覚と、アイデアがぎっしり詰まっている。
そして、最後はおうちで手を動かして、体感してもらうというのが、今回のみそです。
忙しい毎日ですが、5-10分程度時間を取って、3枚の紙から生まれる美しい立体の感動を味わってほしいと思っています。
自分たちのコレクションも、「なんだこれだけ?」というところから、感動が生まれるといいな考えています。
By Akiko Yonei
]]>よく、工業製品と人のものづくりは相反したもののように、言われるけれど。私にはどうしてもそう思えないのです。
たとえそれが、機械によってつくられたものだとしても、ピシッと切削され金属たちを見ると、とても美しいと感じてしまいます。
ここの板は、ワイヤーカットという技術でカットされています。
この切削技術は、他の精密な工業製品と同じように、やはり人間の経験値や勘が必要になります。
想像以上に、人の能力を必要とされています。
機械はどんどん新しいことができるようになったけれども、その機能をうまく使えるか、使えないかは、結局人しだい。
色々なテクノロジーに触れれば、触れるほど、機械がそこにあれば、高度なものが出来上がるという訳ではないことを、実感します。
機械の複雑なコンピューター制御の設定を、実試行錯誤して、失敗して、またやり直して、その経験と勘で、設定していきます。
技術から生まれる、デザインというものがあると思っています。
そのインダストリアル・テクノロジー(工業技術)に、創造性が無いなんてことは全くない。
「工業」は「工芸」の進化形ととらえることもできるのではないでしょうか。
実は、今の「工業」で制作に関わっている人たちの、情熱や人間的な「感覚」によって、こういう精緻で美しい製品が生まれてくる。
そしてそのあと、さらに人の手が入り、モノが出来上がっていきます。
MENTOSENの制作には、「切削」という技術が多く使われています。
Kosa[こうさ]ペンダント・Kosa[こうさ]ピアスは、切削技術によってつくられたリングです。
by Akiko Yonei
日々の生活に使うためには、しっかりとした仕事、安定した仕事がとても大切だと考えています。
結局、最後はクラフトマンの手や、感覚に頼ってジュエリーは出来上がります。
クラフトマンとのコミュニケーション、そして新しいものを、共につくるわくわくする気持ちが、何とも言えないんです。
日本には、武士の時代、刀の鍔(つば)や鎧(よろい)などをつくる優秀な刀剣金工達がいました。
廃刀令後の彼らは、その独自の感性と技をジュエリー制作に見出します。
日本のジュエリー制作は、金工の仕事の影響を強く受け発展してきました。
「杢目金(もくめがね)」は日本発祥の金属工芸の技術です。
今や日本国内よりむしろヨーロッパ、アメリカなど海外での方が有名で、その金属工芸の高い技術はリングで人気を博しています。
歴史ある日本独自のモノづくりと、新しい時代を切り開く感性や技術がMENTOSENのものづくりのベースになっています。
コレクションを見ると、日本の和彫りやそのほか鏨(たがね)を使ったテクスチャーなど、様々な日本の手仕事を取り入れているのがわかってもらえると思います。
日本独自のモノづくりと、新しい時代を切り開く感性や技術。
その両方が、今を生きる私たちに必要だと感じています。
By Akiko Yonei
]]>
その動きは、それまで素材価値を中心として考えられてきたジュエリーに一石を投じました。
ジュエリーをアートとしてとらえる、その考え方は、
「社会の問題を解決する」というデザインの役割に、
更に踏むこんで、
「社会に問題を提起していく」という新しいジュエリーの役割を生み出しています。
「Mentosen」は、コンテンポラリージュエリーのアーティスト達がデザインに参加したり、関わって、新しい価値感を生んでいく試みをしています。
ドイツで活動する 西林佳寿子とSHINKO STUDIOが一緒に作ったコレクションSurface[めんとせん]
このコレクションは、2018年に金とホワイトゴールドで制作されたもので、それを、新しい技術を使って、もう少し一般の方にも買いやすいようにしたリニューアル版です。
西林佳寿子とMENTOSENを制作しているシンコーストゥディオとは、長い付き合いになります。
はじめて彼女のジュエリーを見た時に、「なんて完成された造形なんだろう!」と衝撃をうけました。
日本に来て個展を開催した時に、初対面ながら色々お話したのがお付き合いの始まりでした。
彼女は25年以上にわたって、ドイツやヨーロッパ各地のギャラリーが作品を展示してきました。
series ori – shape u2 Kazuko Nishibayashi
ring silver 935 ag
Each ORI is handcrafted by cutting and folding it from just one silver sheet
Jeder Ori-ring wird durch schneiden und wickeln eines einzigen silberstreifens hergestellt
ドイツで25年以上もやっていたら、さぞかし野心的な人かと思いきや、実におっとりしていて、一方で、ものづくりに強い芯を持った、本物のアーティストだと、私は思っています。
series MUSUBI – shape [flat] – earrings gold 750 Au Kazuko Nishibayashi
metal surface textured with paper-structure
Oberfläche in Papierstruktur geprägt
どういう基準を持って「アーティスト」というかどうかは、今の時代それぞれだと思うのですが、
私は、アーティストの作品がどんなによくても、その人に人間的魅力を感じられる人ではないと、作品も長く愛せないと思います。
その『人』から生まれてくる、独自の世界観が、モノにあふれていることが好きです。
ジュエリーは身に着けて、自分の人生で最も近くにいるモノなので、自分自身の人生の歩み方や考え方に合うものを見つけて、長く身につけたいものです。
by Akiko Yonei
]]>着け心地であることを考えます。
]]>
Kakeru[翔]ダイヤのないリングは、元々はパリのお客様からのオリジナルオーダーでした。
最初は、Kakeru[翔]ダイヤ付きのリングを、プロポーズの婚約指輪として注文をしてくれました。
西洋諸国の男性の方々は、サプライズで求婚します。
そして、見事プロポーズは成功。
こちらもとても幸福な気持ちになります。
その後、プロポーズを受けた彼女が、すっかりテクスチャーが気に入って、マリッジリングはこのリングと重ねて着けたいから、ダイヤなしのリングはつくれないかしら?....
という、オーダーをいただきました。.....
]]>