技術と対話から生まれるものづくり - 新潟の職人たち - 内田岳志 1
ジュエリー クラフトマンの内田岳志の新潟のアトリエは、所狭しと工具で埋まっています。
さながら、ジュエリーの制作要塞と言ったところ。
振り向いたら、すぐに次の作業にかかれるように、
仕事の手順が滑らかに進んでいくように、
様々な工具や機器の設置場所が工夫されています。
ジュエリーレベルのものづくり
そもそも、コロナ禍の苦しい状況でも、MENTOSENのコレクションを、「新しくつくって発表していこう」とおもいきれたのは、
彼の仕事への情熱と、技術と感性の裏付けがあったからこそ。
私たちMENTOSENのデザインを発想する側は、社会の流れに沿った要望としてのデザインというものを、常に考えるけれど、
それを実際に金属に落とし込んで、おもちゃではなく、ジュエリーレベルの製品に仕上げるのは、実はとても難しい。
デザイン上では、可能でも、クラフトマンの技術が追いついていないと実現はおぼつかない。
対話とものづくりの醍醐味
シンコーストゥディオのコレクションや、毎回違う面倒なカスタムオーダーの一点一点のデザインと制作。
そのたびに、私たちはどれだけ対話をしてきたのだろうと、今までの制作を思いだします。
「こうしたらもっとやりやすいんじゃないか?」とか
「こうしたらもっとかっこいいじゃないか?」とか
デザインとテクニック(技術)は一体であって、
時には、テクニック(技術)がデザインのきっかけになる。
それも、とても自然なことだと、私たちデザイン側も考えています。
お互いのアイデアを出し合って、その対話は実はものづくりの醍醐味で、その時間はとても楽しい。
とはいえ、その楽しさは、実は彼のとてつもない技術と、細かい仕事の組立と頭脳に支えられています。
新しいことにチャレンジするのは、勇気がいるし、時間がかかる。
けれど、彼はそれをあえてやる方を、いつも選びます。
(後で冷や汗をいっぱいかいていると思うけれど)
だから、私たちは思いっきり、今までにない新しいことに挑戦することができているのです。
石留のテクニックや金属の表現から生まれるデザイン
Sorow[そろう]というリングのダイヤの石留は、ダイヤのガードル部分(ダイヤの幅の一番大きい部分)を、リングの壁面に潜り込ませいます。
そして反対側を1本の爪で留めるという、ちょっとアクロバティックな石留。
それによって、指に装着した時、きれいな一本のカーブラインが生まれます。
さらにもう一本のSorow[そろう]のリングとぴったり重なりあいます。
またリング側面はの鏨(たがね)という工具を使って、まっすぐなラインを彫り込む金属の表現をしています。
それによって、手を動かすたびに微妙な光の反射が生まれます。
この一つ一つの表現が、
私たちの一つ一つ対話の中で生まれてきました。
その対話に答えて、私たちの想像を上回る感性度で仕上げてくる彼の仕事には、日々驚かされています。
【内田 岳志 -Takeshi Uchida】
ジュエリークラフトマン。エンゼルリング代表。一級貴金属装身具製作技能士。
技能グランプリ、JJA ジュエリーデザインアワード等受賞歴多数。
シンコーストゥディオ 米井