実践女子大学で授業してきました

2024年11月27日、渋谷の実践女子大学で、准教授のコルネーエヴァ・スヴェトラーナ先生の講義「日本文化論b」の授業でお話させていただきました。
外部から一般の人を呼んで、お願いするというプログラムが、今の大学にはあるのです。
お話したのは主に、①金属工芸と日本のジュエリー②デザインとジュエリー
のお話し。ちょっとだけ講義の一部を紹介しましょう。

1.金属工芸と日本のジュエリー

せっかく「日本文化論」なので、刀剣金工と明治以降の近代ジュエリーについてのお話です。

刀の柄のところに施される目貫(打出しという技法)

江戸時代までは、日本はとても平和な時代が続いていました。

けれど武士は刀は必需品。

そのため、刀の鍔(つば)などの刀の装飾をする職人たちが、各藩の大名の援助の元、その腕を競い合っていました。

そんな刀剣金工の人たちは、明治に入り、廃刀令が施行されると、職を失います。

そんな時に、西洋に追い付け追い越せの日本で必要になったのが「ジュエリー」です。

そこで、刀剣金工や簪(かんざし)などの錺(かざり)職人たちは、ジュエリー制作に仕事を変えて、近代西洋ジュエリーをつくり始めました。

 

今でも、日本の和彫りやハイジュエリーの石留などには、日本の鏨(たがね)の技術が生きています。

2.デザインとジュエリー

ともすると、ジュエリーはダイヤモンドや金、プラチナといった素材価値に目を向けられがちです。

もちろん、長く引き継いでいくという意味での素材の選定はとても大事だけれど、それと同等か、あるいはそれ以上に、社会の方を向いてデザインをするということも、とても大事だと思っています。

なぜなら、デザインはそのカタチだけではなく、

社会の問題を解決するために新しい価値を提案すること

だからです。

例えば、女性たちが、以前とは違って皆働くようになって、昔とはジュエリーをつける状況が変わって来たでしょう。

そのために、どんな新しい価値の提案ができるかということが、意味あるモノづくりだと思います。

花やハートや、かわいいモチーフやきれいなものを女性は好むもの...

そのようなプロトタイプな女性像が、ジュエリーの業界では広まってきました、けれど、それは旧来の日本の封建的な女性の生き方像とリンクしているとも考えられます。

そして、もっといろいろな方向や、方法でジュエリーをつくっていくことが様々な考え方を持つ人たちを、柔軟に、軽やかに社会に認知してもらう一つの道だと考えるようになりました。

そして2021年、MENTOSENというジュエリーコレクションをスタートしました。

「デザインとものづくり-人とデジタルの関係」をテーマです。

立体でデザインを展開し、職人との形の共有をするために、CAD(立体造形ソフト)でデザインを起こし、3Dプリンターで試作モデルを出力する。

それによって、立体である人間の体に寄り添う面白いデザインにたどり着く。

効率化のためのデジタルのを使うのではなく、今までにない新しい価値を提案するために、新しい技術を使いきってこそ、意味があると思います。

そして、伝統の技と新しいものがつながっていくと、さらに独自性が生まれていくでしょう。

そんなお話をさせていただきました。

体験しよう

そんなことをお話しつつ、ちょっと実際の体験も授業に取り入れてみました。

途中で3Dプリンターのモデルを見てみたり、または現物のジュエリーをはめてみたり。

また、AR(仮想現実)をタブレットで動かし、教室を歩き回り

ポップアップ折り紙を折って、平面から立体への展開を実感してもらいました。

コルネーヴァ先生は、ロシア出身ですが、「武士道」に関する研究をはじめ、数多くの日本の文化の論文を発表しています。
授業当日も、自分でしつらえた着物で来てくれました。
とってもきれいでしたよ。

学生さんたちは、かなり積極的に授業に参加してくれました。

AR体験や折り紙工作は、やっぱり盛り上がりました。

この機会を与えてくださった、コルネーエヴァ先生、本当にありがとうございます。

ソビエト連邦が崩壊を思春期に経験し、日本に渡り日本の文化研究と教育に携わっている。

激動の時代を乗り越えて、新しい道を切り開いてきた方ですが、そんな苦労を感じさせない、軽やかさがあります。

とっても楽しい先生です。

社会にはいろいろ難しい問題があるけれども、若者と話すっていうのは、未来に希望を感じます。教育ってすごいなあと思う一日でした。

シンコーストゥディオ代表
米井 亜紀子

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